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今回のとんじる祭は、今までで一番やりたいことが叶った演劇祭だったと思う。これまでのとんじる祭も、もちろんそれぞれが楽しかったし最高だったんだけど、演劇祭としてのコンセプトというか、目指している方向性みたいなものの話。
ここで、【前回のとんじる祭(TRF2018)終了後のブログ】を引っ張ってみる。
『こんなにたくさんの演劇人の思いとつながるとんじる祭は初めてで、一気に7公演した気分になった。でもそれは多分、俺が ほとんどの団体や人間と作品を介して接することができたからであって、他団体の作品に客演しなかった参加者については やり切れない。俺だけこの気持ちになっても何の意味もない。他団体の作品に出ずに1作品しか出なかった奴はただの演劇祭かただの1公演の楽しさしか享受してないし、出演しただけでスタッフ関連一切やらない奴らも ぶっちゃけとんじるの参加者なんかじゃない。いろんな俳優がいろんな作品に出てる、訳わかんないものが見たいなあ。』
今、読んでも 当時の悲しさで苦しくなってくる。
とんじる祭終了後恒例のカティと二人で話すタイムで、
前回終了直後、僕らは本当に絶望していた。
『全員それぞれ』が歩み寄って、助け合って、受け止め合って、混ざり合って、でも、最後の最後までアイデアを出し合って、誰がよかったとかじゃなくて みんな一人一人の顔が浮かんで、バカみたいなことに無理しない程度に全力出すみたいな。何より、俺たちと近い価値観で、人や演劇を愛していて、互いのリスペクトがあって、アホみたいなふざけ方ができる奴らが入り乱れる祭り…たぶん、そんなんがとんじる祭の前提条件だけど、人間も団体もいろんなとこあるんだから『全員』は難しいよなっていう。
『全員』は難しい。でも、『全員』そうでないと やっぱ とんじる祭じゃない。テンプレ演劇祭と違って、指先、髪の毛の先まで「血が通って」なきゃだめだ!でも、これって、案外、ふつうの劇団の中では当たり前の光景なわけで…。シンプルに、とんじる祭という名の「劇団」がやりたいだけなのかもしれんね。
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今回のとんじる祭2020に戻ると、『全員』ではなかったにしろ まとまりとしては「劇団」感が確かにあった!だから、それが手ごたえに繋がったんだろうな。
過去には、何故か3人しか揃わなかったやる気なくす打ち合わせもあったのに、会議には当然のようにみんな参加してくれたし、スカイプやラインでの通話も効果的に活用できた。俺とカティがやんなきゃいけないことや考えざるを得なかったことも、みんな進んでやってくれたしアイディアやフォローを出してくれた。この前のとんじる祭で味わった悲しさや苦しさって何だったんだろう?って思う。
俺とカティが演劇祭を細かくコントロールせず、甘えたり委ねたりした部分も大きかったのかもしれない。それで、スタッフ面が雑になったり直前でお願いして後手後手になって負担かけたのは 反省すべきところだったけど、「原点回帰」でそういう ざぶっとした無計画さと直前にやべえやべえ!っつって団結していく勢いみたいなのがやっぱり必要だったかも。ちょっと この前は、背伸びして「ちゃんとやろう」としちゃった。「ちゃんと」は必ずしも「面白い」にはつながらないみたい。
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ところで、昨日は「原点回帰」とか「やりたいこと」「血が通った」ことって何だろう?と、あ〜だ こ〜だカティの車の中で考えていたわけだけど、答えはシンプルに、隣のサイコパスに出会ったことで生まれたものだった。書いとく。
カティはサッカーやっていたから、スポーツ畑だ。
「スポーツは勝ち負けがあって、やっぱ負けたら何にもならないのが苦しい。演劇には それがない」みたいなことを言ってた。
俺は、もちろん演劇畑。
俺は、劇団にいたとき、もちろん劇団も仲間も作品もみんな大好きだったんだけど、そこには絶えず「勝ち」にいかなきゃいけない状況が確実にあって、それが何かすごく辛かった。別の現場でも、尊敬する人たちはみんな口をそろえて「演劇は遊び(PLAY)だ」「演劇には答えがない」って教えてくれてくれるんだけど、どうも僕には彼ら彼女らが「仕事」や「答え」のためにやっているように見えて、何だか、身体がその矛盾に耐え切れなくなっていった。もちろん、自信がなかったからこそ、そんなふうにネガティブになっちゃんだろうけどね。もう、自分がやる手触りのものしか信じられなくなった。
だから、カティと会ったことで、
『演劇畑のやつが何故かスポーツ畑のやつから
勝ち負けのない演劇のやり方を教わる』という、
あべこべな順序で僕は 演劇の楽しさってものを知った。
演劇って週一の稽古でも できるんだ〜とか。
このサイコパスには感謝しきれませんね。車間距離、攻めがちなのはほどほどにしてほしいけど。
それで、話は戻るけど、結局「原点回帰」や「やりたいこと」「血が通った」ものなんて、演劇と同じで言葉や思考で定義づけられるものじゃないんだろうな。カティも何なんやろねーって言ってたし、時間だとか空間だとか目に見えない感覚なんだと思う 俺たちが大事にしたいものは。だからこそ、あの瞬間に触れるためにあの瞬間に戻りたくなるし、あの瞬間を立ち上げたくなるし、あの瞬間にならなければ血が通った感覚は味わえないんだろう。
だけん、演劇も演劇祭もやるんだろうな、勝ちとか 価値とか ないやつを。今回はシンプルに演劇を楽しむことが好きな団体や人間が揃ってよかった。
長々、すいません、お疲れさまでした。お客さんも含めて、みなさん大好きです。また!
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演出:難しかった。作家と話せてよかった。
役者:なめてました。やっぱダメだ。
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