その愛想笑いやめろ

サンピリ演出の元一のブログです。
適当に書いています。
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奥山貴宏とオレ
 「INDEPENDENT:FUK 13」
相内さんが到着していよいよ明日小屋入りです。

今回の作品は奥山貴宏さんの「ヴァニシングポイント」という小説を原作に
僕が脚本を書き下ろしたもの。

僕は大学時代、奥山さんの闘病記「ガン漂流」シリーズを読んで彼の病気や死との向き合い方に衝撃を受けた人間の一人です。
彼の闘病記はそれまでのお涙頂戴の闘病記とは一線を画する、
自身のライターとしてのプライドを守り抜いた読み物でした。
病気とは関係のない映画や音楽についての批評や感想が書かれていて面白く、
ガンの進行や闘病生活も、ライター独自の着眼点で書かれていてサクサク読める。
そして彼の夢であり、「オレを覚えていてほしい」との想いで書かれた小説が
「ヴァニシングポイント」という作品でした。

でも、彼が去って8年が過ぎて、
果たして彼が魂を削って書かれたものが今もなお人々の記憶に残っているのか、
今後、新たな読者によって広まっていくのか、という疑問が生まれました。
所詮、彼も時の人であったのか、という。

確かに「ヴァニシングポイント」は、小説として名を残すような強度のある作品であるかと問われれば、俺にもわからない。私小説から逸脱していないことや独自の語り口も相まって完成度には疑問が残る。
時の人とはいえども日本全体が熱狂したわけでもなければ受賞作品でもないから
多くの人が支持する有名な作家や著作物のそれと違って存在感が薄れていくことも納得できる。

しかし俺は、だからって奥山貴宏という人間がいたことや「ガン漂流」「ヴァニシングポイント」がこの世から忘れられていいとは一切思わないし思いたくない。
人の死を忘れていくことで残される人間の生が推進力を得るとしても。

この舞台作品がどの程度原作の魅力を伝えられるか、俺の想いをぶちこめることができるかわからないけど、全生命力を懸けて、少しでも「オレは覚えている」という彼に対してのアンサーになればいいと思ってる。

また、『評価されることもなく平々凡々に日々演劇作品をつくっている俺たちの「作品」は果たして残ってくれるのだろうか』という命題への挑戦でもあります。

観に来なくても、いい。
糞みたいな流行に流されることなく、あなたが感銘を受けた人や大好きな作品を確かな実感をもって次代に受け継いでいってほしい。
それこそが今生活を投げ打って演出家として作品に携わっているオレの全てです。
うんちぶりぶりぶり。

ヴァニシングポイントの冒頭が聞けます↓
「VP オーディオブック」
http://www.youtube.com/watch?v=gLRT05P9X00
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サンピリとえるじぐも「音がない空洞に」報告
 サンピリとえるじぐも「音がない空洞に」が終了したので、
企画や演出など、頭にあったことを記しておこうと思う。

【企画】
7月のワンコイン実験シアターにキャンセルが出たという話を聞き、
7月に何かやっておきたい気持ちと、ガラパの石橋達也と芝居をしたいという欲求が後押しして
急遽今回の制作を行うことに。

当初は僕の演出作品にいっしーが出る予定であったが、いっしーと2人でやりたいことを話してみると、いっしー自らが初脚本・初演出をしてみたいということだったので、企画内容を変更。2作品をそれぞれが別の稽古をして公演する形式になった。

企画内容の申請時、代表の五味さんに感化されその場で実験内容を変更。
別々の脚本でそれぞれの上演を行う予定だったのだが、いっしーの書いた一つの脚本を2人がそれぞれ別メンバーに別の演出をつけて行うという実験内容に。

後日、いっしーは専門学生時代の友人を集めて「えるじぐも」という団体を結成。
脚本のタイトル「音がない空洞に」が決定する。

【座組】
今回のサンピリは、当初「其ノニ 光」に参加したこがまりやと僕の2人だけだった。
そこへ「の 変身」に参加した深田知倫が声を上げ、ガラパの公演で知り合ったイリベちゃんづてで、にしじま悠、加藤紹吾が加わる。
一度やった人ともう一回組みたいとはあまり思わない。
二回目の出演となる2人をどう演出するかが課題となった。
また、初対面の2人と組むという試みも易々とはいきそうにない。

スタッフはゼロ。制作ゼロ。
メンバーに助けてもらいながら、進めていく。

【脚本】
脚本の設定やコンセプト、プロットは早い段階で決まっていた。
「専門学校が舞台」
「光と夏希は幼馴染で数年ぶりに再会するも、光は聴力を失っていた」
「夏希と八木は高校時代吹奏楽部に所属していた」
「脳転移」「自己犠牲」「友情」「仲直り」

好感が持てるセリフ回し。
口を読める、脳の組織を転移するなど、ファンタジー要素多し。

ただ、笑いや設定の説明などに会話が消費され、展開が遅く感じられた。
また、急遽決まった短期間の作品であり、初の執筆ということもあって上がりは遅い。

本番も近づき、やむを得ず、サンピリヴァージョンの後半を僕が執筆することになった。
コンセプトやプロットは把握していたので、えるじぐもバージョンを想定しながらの執筆。

※したがって、サンピリヴァージョンの脚本には竹内の手が加わっている。

【サンピリヴァージョンの設定、ストーリー】
えるじぐもとサンピリとでは、話や設定、結末が異なる。
元のセリフ回しや設定を生かしつつ、えるじぐもと状況を反転させていった。

第一稿が出てきたとき、光と夏希の会話が表面的に行われていたら面白いのではないかと思いつく。(夏希と光が再開し、「背が高くなったね」など軽くお互いの変化を口にするシーン)
そこから『光と夏希は幼馴染であったが、仲違いしていた』という裏の設定、サンピリヴァージョンのコンセプトが生まれたのだが、実際に試してみると、うちの夏希・光の役者と相性がいい気がして採用。
『光と夏希は幼馴染であったが、仲違いしていた』ことをヒントに、テーマである「友情」や「自己犠牲」をえるじぐもと違う表現で行う方針になった。

「光は耳が聞こえず、相手の口を読むことで会話できる」という制約は何かしらの表現手法・演出を生み出す手がかりになるのでは、と考えていたが、役者が聴覚に障害をもった人間の身体を短期間の稽古で会得するのは難しいと判断して断念。
「光の耳は聞こえている」という設定に変更。
「聞こえていない」という光の設定は「他人の話を平気で無視するような人間性」で置き換える。

そこで、「光の耳は聞こえている」→「光と夏希は仲違いをしていた」→「夏希の攻撃によって光の聴力が奪われる」→「夏希が(後悔し、)救いのない自己犠牲を行う」→「仲直り」というサンピリバージョンのプロットイメージが完成。

光との再会を経て、夏希は過去に光に受けた傷について八木に打ち明けようとするが、
すんでの所で光への軽い復讐(会う約束をすっぽかす)を思いつく。
→本来のえるじぐもヴァージョンだと「夏希は・必ず・遅れてくる」

夏希に騙されて挨拶程度の嫌がらせを受けた光は、夏希の大事なフルートを八木から取りあげてしまう。
※夏希にとっての音楽(フルート)は、「光に聞かせるためのもの」ではなく、「光によって傷を負った心を癒す存在」に変更。光と別れて高校で得た大切なもの。
※光にも、夏希の音楽と同様の大切な存在があり、それを博士というボーイフレンドにした。
このお互いが得た大切なものを巡って夏希と光は再び争いを始める。

光のボーイフレンドを誘惑し光を追い詰めた夏希は、博士に光の耳を壊すように仕向ける。
耳は音楽をやっている夏希にとっては大事な器官。
→えるじぐもと同様、光の聴覚に影響を与えるのは博士

耳を失った光はショックを受け、夏希は勝利を確信するが、
過去を清算した過程で仲違いする前の小学校の頃の記憶に心をかき乱される。
そして毎日学校で目にする幼馴染の傷。罪悪感に苛まれる。
最終的に夏希は自分で自分を傷つける行為に及ぶ。
そういった償い方でしか広がった距離を戻すことはできないと考えた。
救えない二人。男の3人があっけに取られて見ている。

その他、鍵の下りは後半にほとんど影響を与えないのでカット。
校舎が古くて迷いやすい設定も、軽く触れる程度に変更。

【演出】
「音がない空洞に」というタイトル通り、音響は一切使わない。
た、会場は305を使用する都合上、照明は自然光と黒板灯で代用。
舞台は会場の強みを生かせる「専門学校の教室」をメインに打ち出し、
他のシーンや時間経過は同時多発的に進行する演出手法で表現する。
※なお、舞台を教室として設定したのは昨年参加したガレキの太鼓のオマージュ

【役者】
こがまりや(夏希)

目ぢからがあり、他者としっかりコンタクトがとれる。
攻撃的な、もしくは感情的な、爆発力を必要とされる演技はやれる。
安定感もあり、安心して話の中核を任せられた。
稽古や制作面でのリーダーシップもあり公演を支えて気が置けない人。
体力はないが、頑張った。笑う演技が苦手。

サンピリの夏希というキャラクターはえるじぐもと同様に『他人を思いやれる人』。
そして自分の好きな音楽をあきらめても友人を救う過剰な正義感や、矛盾を生む自己犠牲に踏み込んでいくという他人から見ればやり過ぎで違和感のある人物。
この夏希が自分を犠牲にするクダリは他人には共感し得ない、いわゆる脚本の欠陥なのかもしれないが、劇的ではある。
こがちゃんにはそういう「傍から見たらバカ」な夏希を振り切って演じてもらい、一週回って「そういうこと実際にある、してしまう」という心理にお客さんを引き込んでもらった。
サンピリヴァージョンでは脳組織の転移などのファンタジー要素は削られているのだが、だからこそ夏希の自己犠牲の救えない感と切実さが強調されていい。

深田知倫(八木)

パワーがある個性派。
カツゼツが悪く不器用なところもあるが、それが彼の持ち味。
一つ一つの演出に対してしっかり答えられる対応力も出てきた。
演出との対話を積極的に行い、またムードメーカーとなって座組をひっぱった。
気が抜けると別人のように小さくなってしまうのが惜しい。

八木のキャラクターも基本的にはえるじぐもと一緒。
役者の演じ方次第でこんなにも変わるんだと思った。
また、夏希の高校時代の友人という設定は、踏み込んで「高校の頃いじめられており、吹奏楽部と夏希の存在が彼を救った」とした。
うさぎさんの演技スタイルに合うし、夏希を追う推進力にもなる。
「変貌してしまった夏希を止められない、救えない」「光に嫌がらせを行う道具にされる」「光に騙されて夏希に怒られる」「夏希が別の男とくっつく」「光にひどいことをされる」「夏希に助けてもらえない」など、不幸極まりない。

にしじま悠(光)

初参加。大谷出身。
ブランクがあったが、回を重ねる度に確実に上手くなるタイプで後半はよくなってきた。
弱点としては高校演劇からの演技の癖(目線や言い方、歩き方)が抜けないこと。
ただし、克服できるタイプではあると思う。
外に対してもっと影響できる役者になってほしい。

光は完全にえるじぐもとタイプが180度違うキャラクター。
耳は聞こえるし、威圧的で自由。見下した態度を取るが、彼氏には甘えるし、裏表も激しい。
原作から離れている分、説得力に欠く人物設定であったとは思う。

加藤紹吾(博士)

今年3月から演劇を始めた。バスケできる。
宮崎の訛りや会話感は弱点ではあるが、強みでもある。
また、身体的なワークは得意ですぐに対応できる。
しかし、如何せん演劇を多くは知らず、伝え方が難しい。
多くの芝居を見て、自分を生かせる人や作品に出会ってほしい。

えるじの博士と別人であるサンピリの博士。
しゃべり方がれぃみぃと同様に独特であったことが救い。

【グリーンカード(本番直前のその役者にしか伝えない演出)】
20日13:00
夏希 光と睨み合うとき、10秒間をとる。→光
光  八木に連れてこられるシーンで、本当に帰る→八木
八木 「3・2・1、くる!」のセリフを二回行う→全員
博士 水を頭からではなく、顔に直接かける。→八木
助手 名前を「ジョッシュバルト・スーパービキニハンター竹内」に変更→全員
※ 舞台上に客席(特殊視点の席)を設置。

20日19:00
夏希 光と睨み合うときに近づく。八木を責めるシーンで大声をあげない。催眠は人差し指
光  夏希と睨み合うときに近づく。八木を縛るシーンで倒す。
八木 なし。
博士 ラスト、光の耳にあるガーゼを取り「光は夏希を騙した」という終わりにする→全員
助手 名前が「シコシコシコ次郎」に。キャラクターが怖い感じに。→全員

【えるじぐも】
脚本が脱稿しないいっしーを温かくも厳しく支えていた。
本番当日に上がった脚本を覚え、ぎりぎりまで稽古に励んでいた。

【実験結果】
結果的に「一つの脚本を2人の演出家が上演する」というよりは、
「一つのコンセプトを2人の脚本家が執筆する」という実験になってしまった気がする。
脚本が脱稿していたら違ったかもとは思うが、
演出の際に脚本をいじってしまうのは演出といえど良くはない。もうこれで3回目。

【感想】
同じような作品ばかりつくっている気がしてならない。
頭にはたくさん出てくるアイディアも誰かのマネに過ぎない気がする。
自分の手で人を成長させることができない事実がきつい。

一人で何でもしようとするスタイルにもうヘトヘト。

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